2012.04.



 新幹線で上京するため、ママと旭が駅まで見送りに来てくれた。
旭はパパが2、3日留守することがわかってないようで、いつも手元にある新幹線の実物大を目の当たりにしてはしゃいでいた。
しばしの別れを告げ車中の人に。

 大阪辺りを通過中に近所の理髪店のご主人の話を思い出した。
お子さんが小さかった頃に、思い切ってブルートレインに乗せ東京まで旅に行かせたそうだ。
下関駅のプラットフォームでなかなか電車に乗ろうとしない息子と別れるのがつらかった。
何かあったらと手渡したテレフォンカードで「今、大阪」「今、静岡」と再々連絡があったことを思い出しますと・・
先日息子と酒を飲み昔話になってその話をしたところ
「本当は行きたくなかった」と言われ
「今頃になってそんなこと言われてもねぇ、良かれと思ってさせてやったのに、私、がっくりしました」と笑っていた。
それにしても、どうして行きたくなかったんだろう?
親の前では行きたいと言ったのに。何故言い出せなかったのかな?
何となく親から発せられる無言の期待感を幼いなりに感じ取ってしまったのか、言った手前後に引けなくなったのか・・
子の心親知らず? というんですかね。真意は定かではない。
薄暗い客車の片隅で受話器を取り、カードの残数がぎゅんぎゅん減っていく中で交わした親子の会話に思いを馳せる。
遠く離れていく親と子の距離だけど、お互いを思い測りながら心の距離感は近づいていく。
時を経て今頃になってそんな会話が出来る関係って羨ましいですよね。

 東京駅に着く。
駅は人、人、人。
東京都の一世帯当たりの平均人数が1.99人。
2人を初めて下回ったという。
「あらゆるものには距離があるのだ。
 あらゆるものとの距離を測りながら人間はいつも考える。
 幸福とは何かを」
長田弘の詩が浮かぶ。

 所用を済ませ、ホテルから家へ電話。
「新幹線のDVDを見て旭がねえ、パパ乗っとるかねえ、って言いよったよ。
 お帰りはいつですか?」
いつものママの声がした。
昇より



















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