2013.02.



 節分の日に豆まきをした。
近所の豆のありよしで購入した鬼打豆と赤鬼の面を用意して、そっと玄関まで行き、旭に分からないように隠れ出番を待つ。
旭は台所の椅子に腰掛けママから渡された豆を持ち鬼は外の練習。
ママの合図でいよいよ鬼の登場。
「ガオー鬼だぞー」「悪い子はいねえかあ」と秋田県に伝わる大晦日の伝統行事(なまはげですね)と節分を取り違えた間抜けの赤鬼が段ボールの棍棒を持って現れるや、旭はこちらをじーっと見つめた後、声を張り上げギャンギャン泣き出した。
お面ののぞき穴から見たその様子は可笑しく、手にしたipadで撮影中のママもニコニコしている。
「そうそうその調子!」と益々調子に乗るところだが「あれ、昨夜も泣かせたな、散髪の時だっけ」とおかっぱ頭の泣いた子鬼を見て思い、ギュッと豆を強く握りしめた息子の手を見つめると後ろめたい気持ちになり、我に返る自分がいたりした。
旭はママに促されるも鬼が怖くて豆が投げられずに、恨めしげにこっちを見ている。
結局パパが現れ三人で「鬼は外、福は内」と豆まきをして寝た。

 数日後、雪の降る金曜日の朝、会社へ行く途中に豆のありよしに寄った。
隣のバイク屋の古林さんもいらしていた。
旭はこの二つのお店の前を通るときはいつもご挨拶をしており、日頃から可愛がってもらっている。
「おはよう」「旭くん元気」と声を掛けられ、旭は「鬼が来たの」と言っている。
「ほんと?」「どんな鬼かね」と鬼の話が出たので鞄にipadが入っていたのを思い出し、取り出して四人で見た。
玄関から鬼が現れる。
旭がママを向く。
再び鬼を見て泣き出しママに抱っこの合図。
パジャマ姿のパパが立ちつくしていた。

 泣いている旭を四人で笑った。
「怖かったんかね」とおばちゃんに言われ旭は照れ臭そうに「パパに会いたかっただけなのに」と言っていた。

 店先には名残の赤鬼の面が飾っていた。
昇より



















一つ前のページに戻る TOPに戻る