2015.09.



 我が家には、見て見ぬ振りをしてやり過ごしている事が3つある。
1つは、秋芳洞の入り口のように破れた襖(旭2歳の時の作品)。
2つ目は、訳もなく突然落ちるブレーカー(給湯器が古いせいか?)。
3つ目は、暖簾のように外れた網戸(蚊の侵入を容易にしている)。
11階のマンションは築35年以上になる。
「市内で最初のマンションだから仕方ないね」と気になりつつも繰り越してきた問題だったが、この夏の終わりにその1つを解決させた。

 仕事を終えて帰宅すると何やらガタガタ音がする。
その部屋を覗くと、レゴブロックで遊ぶ旭の横でママが網戸の張り替えをしていた。
そういえば、朝起きる毎に旭が蚊に刺されて困っていたことを思い出した。
ほとんど刺されない私は当事者意識がないので「11階なのに蚊が来るなんて、やっぱり子供の血の方が美味しいんやろか」と呑気なことを言っていた。
が、ここにきて好きなだけ吸われる我が子を見かねたママがついに行動に移したことになる。
網を張るためのゴムをカッターで切るママの姿を見て、「何故困っていた時に先に気がつかなかったんだろう」という後悔と、この夏育児を疎かにして、だらしのなかった私を叱ったママの事を思い出し、ネジがハマらないことにヒスをおこしかけているママを手伝い(いやこれだと「あなたじゃなくて私がするんやね」とまた怒られて元の黙阿弥になる)。
そうじゃなくて、とにかく家族の為に私がしなければと思い、やったことのない網戸の張り替えをした。
ママの指示に従い旭も手伝ってくれたので作業もはかどり、4枚の網戸の修理があっという間に終わった。
結構簡単に出来たので拍子抜けした位だったが、見て見ぬ振りをしてやり過ごしている4つ目の問題は私自身だったんだと反省した。

 その夜は好物のトンカツだった。
気を良くしてくれたのだろうかと思いキッチンを覗くと、ママがすりこぎ棒で豚肉を力いっぱい叩いていた。
「トントン」じゃなく、骨身にしみるような激しい音なので思わず「大丈夫?」と声を掛けると、「大丈夫よ。美味しくなあれと思って叩いているだけだから」と言って笑った。
肉・たらしくはなかったらしい。
昇より

















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