2017.4.



 ラジオの仕事は番組編成が新しくなるので、三月から四月にかけてが一年で一 番忙しい。共働きの私たちも慌ただしい日が続き、春休み中の旭は児童クラブに 行ったり実家に預かってもらったりしていた。「春休みなほい何で学校に行かんと いけんの」と拗ねる旭にお弁当を持たせ送り出しては、その後ろ姿にいじらしい ものを感じていた。中々遊んでやれないので流石に「これはまずい」と思い、仕 事もピークの頃だったがママとも相談して旭と約束していた秋吉台に連れて行っ てあげようとなった。が、最悪の休日になった。
 予兆はあった。車中旭は漫画を読んでは「まだ着かんの?」とか「なんで雨なん? サッカー出来んやん」などとため息をついたりして落ち着きがなかった。しかも 何度も。「僕もお弁当作りたかったのに(ママが)作ってしまった」と不満を口に した時は、折角早起きして作ってくれたママの気持ちを逆なでさせるようなこと だったので、私とママをイライラさせた。今日は旭の日。旭がしたいことをさせ てやろうと思っていたので多少は我慢もしたし、秋芳洞では見たこともない神秘 的な世界に興奮してとても喜んでくれた時は私達も嬉しかった。それなのに、あ んなことになるなんて...
 結論から言うと、堪忍袋の緒が切れた私が叱り飛ばしたということ。きっかけ は忘れた。朝から何で機嫌が悪いのかをまくしたてたのは憶えているし、腹立ち まぎれに漫画も投げ捨てた。泣きじゃくりながらごめんなさいと何度も謝る我が 子を見て、次第に落ち着いてきた私はふと思ったことを問いただすと、旭はコク ッと頷いた。「パパとママが久しぶりに遊んでくれるけ、遊んでほしいとずっと我 慢していた気持ちが爆発したんかね?」と聞くと、目に力を込めて大きく頷いた。
 カルストロード脇に車を止める。雨はやみそうにない。車中で食べたお弁当は 美味しくも後味が悪かった。窓の外に目をやると、山焼きを終えて黒く焼かれた 土にスミレが咲いていた。
昇より





















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