2011.04.

「災後」


「3月11日から後を『災後』ということになるかもしれないね。」
と友人が言った。
私たちは、今日まで「戦後」という言葉でいろんなことを考えてきたし、その言葉によって区切られ、新しくなった事がたくさんあった。
でも、これからは日本中の人が様々な形で体験したり、感じたりしたこの地震、津波という自然災害と、そして原発という人災からどう立ち直るかが政治から日常生活までを左右するかもしれない。

 朝起きる。
カーテンを開ける。
まぶしい新緑と明るい光が満ちている。
日常はなにも変わらない。
なのに、テレビをつければ瓦礫の広がるのっぺらぼうな風景や
新聞の放射線量が私の傍にある。

 なにをどうしたらいいのか分からない。
分からないけど気持ちが前とは違うことに気づく。
小さな引っかかりが私たちの考えのドアのようになったとしたらそれでいいとしようか。
災後、これからさ!


 「こどもの広場」には正面の壁いっぱい、200号の大きな画がある。
23年前、画家田島征三さんと小室等さんが開いた「畑うたコンサート」のライブで描かれたものだ。
力のある目をした麦わら帽子をかぶった人がトウモロコシの取り入れをしている。
赤い大きなバッタもいる空は青く、風が爽やかに吹いている。
田島さんは生きることと同時に社会とも真っすぐに向き合って元気におおらかに闘ってきた人だ。
「だいふくもち」
「やぎのしずか」
「ふきまんぶく」
「ちからたろう」
「ほらいしころがおっこちたよ、ね、わすれようよ」
「ごみをぽいぽい」
「やまからにげてきた」
「とべバッタ」
「ぼくのおやつちゃん」。
どの作品も限りある命を精一杯生ききっている生き物が描かれる。
とんでもない振って湧いたような自然の災難には、うろたえ、右往左往しながらもそれが通り過ぎるまでしたたかに生き(やぎのしずかシリーズ)、人間の引き起こした人災にはあくまで厳しく率直にノーという(やまからにげてきた)姿勢が見える。

 新しい作品「やぎのしずかのたいへんなたいへんないちにち」は、今の日本中の状況そのもの。
でも、これからさ!と次の日に希望がもてる。
これからさ!

「やぎのしずかの たいへんなたいへんないちにち
田島征三 / 偕成社 / 1,365円(税込)


横山眞佐子













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