2012.07.

「本に出会う」


 やっと本格的な夏。
学校も夏休みに入り、こどもの広場も少しずつ親子連れの姿が増えてきた。
一学期の広場のメイン仕事である「選書会」も終わって一段落。
毎日違う学校にお邪魔し、本を運び、広げ、ブックトークをし、また片付けの繰り返しの中で楽しみは、子どもたちが本に出会う瞬間を目撃できること。

 心に残ったこと幾つか。

 今年なんだか知らない間にちょっとフィーバーしていた「地獄」という本。
出版されたのは1980年。
このたび、漫画家の東村アキコさんの「うちの子はこの本のおかげで悪さをしなくなりました」の帯がついて急にしつけの本として大人に人気がでた。
子供たちはどうだろう。
怖い本なーい? といつも「学校の怪談」や「都市伝説」なんかにはまっている子どもたちにはどう見えるんだろう?
と半ば実験的に(ゴメン)持って行ってみた。
結論から言えば、だーれも選ばなかった。
5年生の本が好きな男の子がその本を最後まで読んで、パタンとしめたあと、
「こりゃーいけん。脅しやん!」と言った。
ある大人が書いていた。
「この本を読み聞かせるとどんな子どもも悪さをしなくなる」。
脅しと取られても仕方ないようなあざとさが本作りの中にあった。
脅される子もいれば、それを見抜く子もいる。
大人はどうだろう? ご自分で確かめて。

 気温34度、湿度はきっと90%の体育館で、ある6年生が自分の選書は終わり好きな本を読もうと探している時、目にとめたのは「チビ虫マービンは天才画家!」(エリース・ブローチ作・偕成社)。
二三ページめくった後、小さな声で「ヨッシャー!」。
そして、本を抱えて隅っこに。
読みたい本が見つかったとき、よーし、いいぞ!
なんだか、嬉しくなって来た、そんな気持ちの篭った「ヨッシャー!」だった。

 そして、お手紙も来た。
「ぼくは、きょうりゅうの本を開けるときょうりゅうの骨があってうれしかったです。
 あと、むかしのほんがありました。
 本にノッペラボウがおったけど、うれしかったです。」
1年生の浜崎りょうくん。
本を読んで嬉しいと思う気持ち。
それが、次の本へと気持ちを向かわせる。
躾でも、脅しの本ではなく、哀しみや苦しみも含めて、本の中に自分を没入できる。
そんな一冊に夏、出会って欲しい。



横山眞佐子











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