2014.02.

「早春」

 広場の近くの国道添いに小さな川がある。
「田中川」という平凡な名前で呼ばれ、海の引き満ちに合わせて水量が増えたり減ったりする。
ときにはボラの大群がやってきたり、ウナギがいたりするが、生活排水が流れ込むせいか、かなり汚い。
そこに、このところ盛り上がるように緑のクレソンが生えてきた。
塩水がやってくるギリギリのところに生え広がっている。
たくましい。
山々が柔らか赤く色ついてきた。
季節変化はどんな天変地異が起きても変わらずやってくる。
だから、希望が持てると同時に切ない。

 3月11日がやってくる。
自然は毎年コツコツと元の緑や澄んだ海を修復しているが人間はどうだろうか?
瓦礫処理はまだ60%以上未処理、30万人の避難したままの人。
壊れた家を撤去しても、新しい仕事を作り出しても、人の心はそう簡単には再生可能ではない。
悲しみに壊れた心や気持ちはもう一度元のところにもどれない。

 もう一度考えてみたい。
この東日本大震災は二つの悲劇が重なったのだ。
一つは天災、一つは人災。
私たちは、天災については、どんなに予測してもそれを越えたものがあることを受け入れざるを得ない。
自然の力もある。

 でも、人災の方はどこまでも、原因を解明し、災いをもたらすものなら速やかに取り除かなくてはならない。
と、子供でも分かりそうな事柄ではないのだろうか?
月日が過ぎ新聞もテレビも今日の紙面やニュースのどこにもこのことが取り上げられない日がある。
危険は去っていないのに。

 戦後世代、団塊の世代と少し揶揄されながら育った私たち。
でも教育現場の先生たちは「民主主義」について、なんとか子供たちに伝えようと熱い思いを持っておられたと思う・・と・・私は感じていた。
中学3年生の時の担任は国語の松永先生だった。
「個人の考えが大切。自分の言葉で話しなさい」
「個人の対局には権力というのがあるのだよ」と自分の戦争体験を交えて話されて、私はそれを自分の胸にしまった。

 原発再稼働、特定秘密保護法の強行採決、NHK会長発言、「最高責任者は私」という安倍首相。
どれも個人が生きていると喜べることには繋がらない。
木々の新芽を憂いなく喜べる日々は遠い。



横山眞佐子











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