2014.12.

「こどもの情景 2014」

 2014年はどんな年だったのか?
振り返ると決して手放しで「良い年だった」とはいえない。
むしろ、これからの不安が増すばかりだったような気がする。

 12月半ば、NHKの「クローズアップ現代」で「本を読まない人が急増」という番組には驚かされた。
若者、大学生の4割が一年間に一冊も本を読まないという。
その中でその若者たちが口にする言葉が「情報」だった。
「情報」は今やスマホを含むコンピューターの方が、早い、大量、持ち運びできることは事実。
そこに欠けているのは「物語」「想像力」「創造力」なのではないか。

 それらは、これからどんどん遠ざかるのか? と情けない気持ちになるが、ここは気をとりなおし、今年心に残った子どもの情景を書いておきたい。


 その1、雨上がりの下校時、傘を持った3人の男の子と女の子1人。
横断歩道の手前で何か発見。どうも子猫の死骸。
女子は飛びすさり、男子は遠巻きに。
一人の子が傘の先でツンツン。シーン。
信号が変わり一人を残してあとは、さっさと行ってしまった。
残った男の子はそれからずっと、そこでしゃがんだまま見つめ続けていた。
もしかしたら死と向き合ってた時間だったかもしれない。

 その2、小さな学校での始めての選書会で、本を選び終わって好きな本を読んでいい時間。
敷かれたゴザの上でみなそれぞれに読みふけっていたけど、一人だけ超リラックスの男子。
余ったゴザが巻かれていたのを枕に夢中で読んでいる。
本は「釣り入門」。しかし足組んだその姿はオヤジ。

 その3、トピックはやはり先月号の陽だまりの駐車場でノートを広げて宿題をしている6人組小学生。

 その4、校庭の登りやすい木には、みんな子ども達が陣取っていた小学校。

 その5、選書会で初対面の一年生が突然私に飛びついてきたので思わず抱き上げると、ちょうどおさるの子どもが手足を回して抱っこされるようにペットリとくっついてきた。
しばらくそのままでからだを預けた後、我に返ったように本を選びにいった。

 その6、広場で、複雑なはめ込みパズルに手を焼いていた私に、5歳の男の子、黙ってパズルの一片を手にすると形を確かめるように動かしていたかと思うと、次々に完成させていった。脱帽。


 子どもの力を信じたい。
命に向き合い、本に我を忘れ、友達との協働を喜び、自然で遊び、寂しさを抱え、創造力を持つ。
子どもの力が落ちたのではなく、大人社会のスピードが子どもの育つを待てないのかもしれないと感じた2014年。良いお年を。




横山眞佐子











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