2015.03.

「松谷さん・今江さん」

 2015年が始まったばかりなのに、私たちは子どもの本の世界を牽引してきたお二人を亡くしました。
松谷みよ子さんと、今江祥智さんです。
松谷さんの「いないいないばあ」の心地よい言葉のリズムが、ページをめくると変化する絵と絶妙なセットになっているんだと、絵本の原点に気づかせてもらった頃、私は子どもの本屋の初心者でした。
そして娘は「モモちゃんとアカネちゃん」の本が大好きでした。
離婚していた私にはモモちゃんのママが、パパと別れることに死神にとりつかれるほど苦しみ、ようやくモモちゃんとアカネちゃんとネコのプーと生きていこうと決意するこの本は衝撃でした。
幼い子どもに「離婚」というテーマの物語を書き、そこに作者自身大人としてのもがきも見えるのです。
それなのに、我が子は何度も読んでほしいという。
ためらいつつ、どこまで自分たちのことと重ねているのだろうかと、考え考えの読み聞かせの日々でした。
作者の生き方や考えが全ての作品の底にあって、松谷みよ子という人の強さと前に進む力を見た思いでした。
その娘が出版社で編集させてもらうことになり、松谷さんの選集のためにお会いする機会をもらったと、嬉しそうに言いました。
「松谷先生は特別な人」と彼女が報告してくれた時、子供時代の物語がどこかの引き出しに仕舞われていたのかもしれません。

 そして今江祥智さん。
講演会にまだ幼稚園の下の息子を連れて行った時です。
飽きた時に備えてドア近くの席に。
でも息子は小さな身体を椅子に預けて今江さんの話に聞き入っていました。
一時間半、静かにしていてくれて良かったと思っている私に「イマエさんって、いいひとだね」と言った息子にビックリ。
と同時に、子どもを侮ってはいけないと深く反省。
障害のある吉村敬子さんが自分の気持ちを車椅子に託して書いた絵本「わたし いややねん」(偕成社)が出来るまでの話を聞きながら、今江さんのどんな人に対しても公正で人間としての尊敬を失うまいとする在り方を見抜く力を大人以上に持っていたのだと知らされました。

 大切な人の本をこれからも大切にする本屋でありたいと思います。




横山眞佐子











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