2015.11.

「便利」

 ノートパソコンをテーブルから落っことして、使用不能になってしまいました。
原稿を書くのと、メールで頂いた返事を書くのと、スケジュールのチェックくらいしか使っていないのに、無いと困る。
この通信も手書き、ワープロ、パソコンと30年の間に変化しました。
「無かった」ものが「有るのがあたりまえ」になっていった時、もう「無い」状態に戻る事はできないのかな?

 テレビ、冷蔵庫、洗濯機が家庭に入って来た時はみんな大喜び。 家事が楽になりました。 でも一家に一台テレビの時代がくると、子ども達がテレビばかり見て大丈夫だろうか?という心配が出始め「ノーテレビデー」を決めてテレビを見ない日を作ろうという動きもありました。
テレビを見る時間を家族で話しをしましょうと言われました。
ほんの10年前の話です。

 今はそれどころではなく、スマホの出現、手軽に出来るゲームソフト、ライン、メール…変化のスピード早過ぎです。
そして、大人がおたおたしている間に子ども達はドンドンそれに精通していきます。
良いか悪いか、どんな影響があるのか話し合う暇もなく、日本中が手の平サイズの電子機器を握りしめることになりました。
人ではなく器械との時間ばかり。

 山口の小さいけれど暖かな町で数年前から「いい夢プロジェクト」という素敵な取り組みがなされています。
町のすべての保育園、幼稚園に可愛い布バックに数冊の絵本を入れて配られました。
このバックを園児たちは順番にもって帰ります。
一週間その絵本は家族によって子どもに読まれます。
好きな本、あまり興味が無かった本、どんな時間に読んだか、誰が読んだかそんな事を好きなようにノートに記して次の家庭にまわされます。
家族で過ごす時間を大切にして欲しい、どんな一日であっても、眠るまえにはみんなが幸せな時間を作り子どもにいい夢を見て欲しい。
いい取り組みです。

 古い本の間から昭和27年7月の新聞が出て来ました。
山口版にラジオ欄がありました。
テレビ欄ではありません。
そこには夕方5時半からNHK『こども「伝記 アンデルセン」』、ABC『連続童話 小公子』、NJB『子ども劇「こどもに化けた河童」』と軒並み子ども向き番組。
5時半にはどんなに遊んでいても家に帰ってみんなでラジオを聞きながらご飯食べようね、という社会の真っ当さだったのかもしれません。




横山眞佐子











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