2016.01.
「おしゃべり」
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「せんだ〜!せんだ!話しをセンダ!! 話しをやめて静かにしなさい!」
小学校一年生の時千田君という、男の子がいた。
小柄でいつもちょろちょろしてて、授業中すぐにおしゃべりして、先生に注意されていた。
千田くんは人気者だった。
休み時間千田くんが昨日のラジオのアナウンサーの真似すると、みんな嬉しくてワーワー笑っていた。
ひっきりなしのおしゃべり。
実は先生も注意はするけど多くは目こぼしされ、千田くんの知識と言葉に舌を巻いておられたのかも。
「おしゃべり」というのは難しい。
「会話」というと改まった感じだけどそんなんじゃない。
食卓で口に食べ物入れて口々に今日あったことを脈絡なくしゃべろうと姉妹争って母に叱られる。
「食べるか喋るかどちらかに!」
そんな時、おしゃべりは一方的で、自分の思いや出来事を聞いてもらえばいい。
意見や感想を求めているのではない。
ニコニコ笑って聞いてくれたらおしゃべりは後から後から。
でも、近頃我が家ではシーンとした食卓。
高齢の母と二人。
「おいしいね〜」「うん。ヤッパリお肉がおいしいね」
しばらくするとまた同じやりとり。
もともと、おしゃべりではなかった母は近頃さらに無口。
ついさっきの出来事も忘れてしまい、ましてや昔の話も「なーんも、覚えてない」と言われる。
仕方ないので、私が今日あったことなどベラベラ喋るのだけど、子ども時代みたいに「喋るか、食べるか!」なんて返ってこない。
なんでもないお喋りは難しい。と書いていて、ハッと気付いた。
今までずっと母はお母さんとして私のおしゃべりを聞いてくれつづけた。
そろそろ、お母さんやめて、子どもに戻ればいいんだ。
そして、こんどはわたしが「はい、はい、あんたはそう思うのね」と受け止める係り。
高齢で少し認知症になるってことは、子供時代を再体験するチャンス?
千田くんみたいなおしゃべりな子どもの母がみつかると、また大笑いできるんだけど。
さて、今夜の夕ご飯時がたのしみだ。
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横山眞佐子 |
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