2016.06.

「こどもの時間」

梅雨も明けました。暑くなります。一学期の間に伺わせていただいた学校の子どもたちも「わーい! 夏休み!」とワクワクしているでしょうね。大人には羨ましい。社会人になると日本の夏休みはほんの 少し。子どもだけの特別な時間です。

友人が夏休みだけ「児童クラブ」のお手伝いに行くことになったそうです。ちょっと前までは夏休み のお母さんたちは「毎日、お昼ご飯食べさせないといけないから、ちょっとね!」などとボヤいていま したが、お昼ご飯どころか夕方まで、子どもだけで過ごさなくてはならない家庭が増えてきました。遊 び場的な原っぱも商店街も学校の校庭も誰かの家もおじいちゃんおばあちゃんの家もなーんにも無くな りました。空っぽの地域。

先日、劇作家の平田オリザさんが下関に来られ、講演会がありました。平田さんは 1962 年生まれ。東 京駒場(東大があるところ)に育ちます。商店街の生きている町です。二軒隣には散髪屋さんがあり、 そこ以外で髪の毛を切ったのは 17 回しかないと。そこには、なぜかおじさんたちが将棋をしていて、子 どもは漫画本を読んでいたりして、「もう宿題済んだのか?」とか「なんか嫌なことあったのか?」と気 にしてもらったり見守られていたりする小さなコミュニティーがあったそう。親の忙しい時には誰かが 見守り、異年齢の子ども同士が教え合いながら遊ぶ。いまでは夢のよう。昔は危険な事がなかったのか、 私の子ども時代も「夕方には人さらいが来る」と言われた。「◯◯が海で溺れた」とか「大雨の溝にはま って流された」とか「木から落ちて骨折した」とか危険はいっぱいあった。でも交通事故やいじめで自 殺などはなかったかもしれない。

精一杯子どもの時間を生き抜く。そんな力強さは現代では望めないのかしら?角野栄子 作『魔女の宅 急便』のキキは 13 歳で一人で生きていく。アストリッド・リンドグレーン 作『ながくつ下のピッピ』 のピッピも両親のいない一人暮らしで生きていく。宮澤賢治 作『風の又三郎』の一郎や嘉助は子供たち だけで牧場に遊びに行く。危険より心配より、希望や成長を後押しするおとなの見守りがある事は言う までもないが。

大人も子どもも良い夏休みを!




横山眞佐子











一つ前のページに戻る TOPに戻る