2019.1.

「ありがとう」

 新年早々の訃報でした。絵本作家のジョン・バーニンガムが1月4日に亡くなったそうです。そう言ってもご存じない方もおられるかもしれませんね。イギリスの絵本作家でケイト・グリーナウェイ賞を2度も受賞。日本でも沢山の本が翻訳されています。

 「ALDO」という本。わたしだけのひみつのともだち、という副題がついています。女の子は「ひとりでいることは嫌じゃない」と言いつつ時に孤独な寂しさに襲われます。いじめられることも、友達がいないことも、お母さんが上の空のことも、夜中1人ぼっちで眠れないこともあります。でも彼女には特別な友達がいます。アルド。ウサギのように見えます。困っている時彼女にだけ見え寄り添ってくれます。大人の簡単な考えで言えば、それは「子ども時代の想像の世界の産物ね、あるある!」などと片づけてしまいかねません。

 子どもの本を大人が読む時、「これは、子ども向きのファンタジー。虚構の世界。夢物語」などと思ってしまう人もいるかもしれません。ところがどっこい、それは「子ども」を生きている人たちにとったらリアルもリアル。自分そのものだったりするのです。

 ある時、北山修さんという精神科医が「自分もジョージのような友達がいた。その頃の僕を支えてくれた」と言われたことがありました。ジョージというのは「ぼくと〈ジョージ〉」(カニグズバーグ作)という児童文学で、やはり主人公だけに見える友達です。北山さんの子ども時代がどんなだったかは知る由もありませんが、大人になって精神科医となり一方では「ザ・フォーク・クルセダーズ」として数々の心に届く歌を歌っています。大人は子ども時代の土壌の上にいるのかも。

 さて、バーニンガムはなんの屈託もない赤ちゃんを描いたものから、孫娘と沢山のことをして遊んでいたおじいちゃんが次第に年老いていき、ある日ポツンと椅子だけが残されている、死を描いた物まで翻訳だけでも70点を超えるでしょう。

 子どもを見守る大人にも大いに助けになるでしょう。沢山の残された本を手に取ってみてください。ありがとう!バーニンガムさん。




横山眞佐子











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