2017.12.

「子どもの王国に」


五十余年の時を隔てて、思い出の小学校で子どもたちに話をすることができた。大阪堺市にある、百 舌鳥小学校。私は一年生の二学期にここに転校してきて、二年生の一学期にはまた転校していった。わ ずかな在籍期間ではあったが、そこで本を書く人になるきっかけをくださった先生や一生涯の友となる 少女との出会いに恵まれた。いつかその恩返しをしたいと考えていた私には、夢のような 90 分だった。どきどきしながら会場へ。なんと、6 年生約 150 名が、ぎっちりぎゅうぎゅうお尻を置くスペースもな い感じで、普通教室に押し込められて私の登場を待っていた。

こらあかんわ。90 分もこんな状態で子どもの心が保てるわけない・・・。こんにちは。私にとっては昨日から眠れないくらい楽しみにしていた時間なんやけど、あんたら、え らいことになってるなぁ?から始めた話は、ほとんど漫談。自分は小学生のころ弱虫で、周りの子たち とは馴染めない、泣き虫でどうしようもなかったけど、一枚のパンツ事件で、人は自分の方向からしか 見えてない、違う見方もできることを知って、ラクになり始めたことをしゃべり倒した。子どもたちの 目のきらめき具合、私のことばを受け取って自分なりにその場を思い描こうとするしなやかな力は相当 なもんでこっちが圧倒された。45 分経って休憩時間を取るまで、だれひとりもぞもぞせず、わめきたて ず、教室の中がことばをボールにしてまあるく渡し合っているような空気に包まれた。子どもたちのこ の集中力は休憩を挟んだ後も途切れることがなかった。その証拠に、司会の先生が「それでは、これか ら後半戦を再開します」といったとたん、子どもたちの中から「セン?それちゃうで」「おかしいやんか なぁ、おれら戦ってないし」とささやき声がもれた。感心して思わず「ええこと言うなぁ?。あんたら、 もう耳が一級品、いや特級品に育っとるよ」というと、「へへへっ」とみんな得意げ。こうなるともう、 どっちがどっちに教えるでもなく、どっちがどっちに教えられるでもなく、いっしょに感じあう時間が 名残惜しく過ぎていった。

話が終わってから子どもたちにもらった多くの手紙には、伝えたかった大事なことがちゃんと記され てあった。

「はじめ難しい話かなと思って話を聞いてみたら、とてもおもしろいけどしみじみしたり、辛いな、 哀しいなとかいろんな感情がこみあげてきました。私と同じ気持ちだった人が他にもいるんだと思えて とても気が楽になりました」

「私が一番いん象に残ったのは『どんなにいやなことでも箱に入れてカギをして、もう一回箱に入れ てもいいから、カギは捨てずに持っときなさい』ということです。私は学校でも家でもいやなことはあ るけれど、今までは気にしないようにしようと思ってよけいにいやになることがあった。けど、大人に なってその箱を開けると、いいことになるかもしれないから、カギはおいとこうと思う」

子どもたちみんな、結構しんどい中を生きている。最後に上から目線の笑える感想を! 「フレンドリーで誰とでも仲良くできそうな陽気な人だなと思いました。でも、たまにちょくちょく、まじめでいい話を入れてくるので、すごく良かったです」


村中李衣















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