2017.7.

「土だんごころごろ」


 学生たちといっしょに、泥団子をつくることになった。 何年か前に、「光る泥団子づくり」は、大フィーバーしたけど、そういえば最近ではあんまり聞かないねえ。みんな、作ったことあるの?と聞けば、半数以上が「ありません。」 え? 幼稚園とか保育園とかでみんなで作らなかった? 「作りませんでした。」

  なるほど、そういえば、安心安全を第一にということでいえば、公園の砂場も裏山も、ちょっと待て の声がかかりそうだよなぁ。かくいう私も、べちゃべちゃの泥団子はいっぱい作って遊んだけれど、「光 る泥団子」みたいな保存価値のあるものは作ったことがない。あわてて、図書館で指南書を探す。そし て、すべて知っていたかのように学生に説明する。

  「まずは粘土質の土を見つけて、少しずつ水を加えながら、泥団子の芯づくりをします。」

  すると、学生たちは、土を掘り返すのが苦手だということが判明。大学の庭を歩き回るが、きれいに 整備されマリア様の見守る庭園を掘り返すことなどできないと、もじもじ。それでも、少しずつおしと やかなりに、土と戯れ始める。気づいたらどの学生も、土の色や粘りを確かめながら、がっしりした団 子を丸め、うれしそうに掌に載せて見せあっている。

  「次は、さらさらふわふわした土をまぶしていきます。コンクリートの上などのざらざらしたきめの 細かい砂をかき集めてみるのもいいですよ。」

  言ったものの、お掃除の完璧に行き届いた学園のコンクリートの上には、ぴかぴかで、ほとんど砂な どない。ここから、学生たちは俄然張り切り出し、さらふわ砂の探偵と化した。はいつくばるようにし て、建物の隅っこを探索して回る。

  「ありました、ありましたよ、先生!」

  ひざっ小僧も掌も乾いてこびりついた泥だらけにして無邪気にはしゃぐ学生の様子を見ながら、いろ いろに考えた。きっかけさえあれば、だれもが五感で感じあう時間を楽しめる。でもそれを奪っている ものは何だろう? ネットには「光る泥団子キット」なるものが、700円前後で売られている。失敗 しない、清潔、おうちの中でもできる、の3つが強調されていた。こんなにお膳立てされて光る球に何 か意味があるのだろうか? とまあここまでは、教師の考える普通の道筋だと思うのだが、実は私、自 分の泥団子をさらにバージョンアップさせようと、岡山から磨き途中の団子を山口の農園まで持ち帰っ た。ここで思う存分砂をまぶし・・・。この目論見を待ち構えていたかのように、農園の道具小屋の入 り口にきめ細かなさらさらした粉を発見。大喜びでまぶしはじめたら、だんだん手がむずがゆくなって きた。ん?ん? なんとそれは、アリ駆除の殺虫粉だった。大慌てで団子を洗い、手も洗ったが後の祭 り。本物の土を知らないとは恐ろしいことだ。

  学生たちは大満足の出来栄えのようでしたが、私は泥団子でなく頭をハンマーで打ち砕かれたような 経験でした。とほほ。


村中李衣


















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村中李衣(むらなか・りえ)

児童文学作家
ノートルダム清心女子大学教授

絵本や児童文学を創作したり、
いろんなひとの絵本の読みあいも
20年以上続けている。


*** 著書 ***
『チャーシューの月』『行け!シュバットマン』(福音館書店)
『うんこ日記』(BL出版)
『子どもと絵本を読みあう』(ぶどう社)


読みあいについてはこちらをごらんください。













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