エッセイを読む

2022年07月

コノロケ日記

卒乳は早くに出来たのに、おかーさんのおっぱいを触りながらでないと眠れなかった3歳の次女ぷんぷん。「しょーがくせーになるまでおっぱいさわる」と、自分が想像できる一番遠い未来まで続けることを宣言して、その果てしない道のりに触られる側の私が思わず呆然となったのも、まだ最近のこと。ところが、急におっぱい卒業の日がやってきました。子ども部屋用の二段ベッドを買ったのです。

お父さんがベッドを組み立てると、長女のあーちゃんは「きょうからこのベッドでねる!」と大喜び。と言っても寝付くまでは母の付き添いが必要そうだったので、巻き込まれる形でぷんぷんも一緒に子ども部屋で寝てみることになりました。上の段があーちゃんで、下の段がぷんぷん。今までは場所の都合上一人2個までと言われていたぬいぐるみも好きなだけ持ち込んで並べ、いざ就寝時間。私は二人が見える位置の椅子に座って、あーちゃん姫とぷんぷん姫の活躍するお話を適当に創作して聞かせ、子守歌を歌い……しばらくすると二人ともすんなり眠ってしまいました。私のほうが驚いて気持ちがついていかないくらいのすんなり具合でした。

日によってはなかなか寝付けず「ふたりでねるようにせんければよかった」とあーちゃんの方がメソメソしたり、トイレで目覚めたぷんぷんが寝付けるまで再び付き添ったりすることもありましたが、一週間も経つと特別感も薄れ、当たり前に二人の寝室に入っていくようになりました。あんなにおかーさんのおっぱいを愛してくれていたぷんぷんも、ほとんど寂しがる素振りなく自分のベッドで寝てしまいます。これでついに、我が家には赤ちゃんがいなくなってしまった……なんて数日はセンチメンタルに浸って過ごしました。

改めて考えれば、ぷんぷんはもうとっくに卒業の準備が出来ていたのだと思います。私のほうが寂しくて、赤ちゃんからの卒業を先送りしてただけなんですよね。私もぴったり一緒から見守る子育てにステップアップ…………ガンバリマス。

今月のお気に入り


『ぺんぎんたいそう』齋藤槙作/福音館書店
絵を楽しんで、一緒に体操して、我が家の赤ちゃんたちが大好きだった絵本。家族みんな今でも諳んじられます。しばらく続きそうなセンチメンタルには、宝物の絵本が効きます。

いまむらかな

いまむらかな プロフィール

大学時代に村中李衣先生のゼミで学び、在学中から 3年間、こどもの広場のスタッフとして過ごす。
2016年9月に長女あーちゃん、2018年12月に次女ぷんぷんが誕生。2児の母として奮闘中。

毎月のエッセイは
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