「そろそろお小遣いが欲しいんよね。」と旭が言ってきた。理由を聞くと自分で欲しいものを買いたいらしい。小学3年生か…気持ちは良く分かる。私も子供の頃親から貰った50円を嬉々として握りしめ、近所の高尾市場で30円のおでんと駄菓子を買っていたことを思い出したが、それが何歳からの話か記憶が定かではない。ただ3人兄弟だったので毎日貰っていなかったことは憶えている。今と違って40年も前の話で時代も変わり家庭事情も様々。皆さんはどうしてますか?
週1回通う旭のプールのお迎えに行った時のこと。この日は仕事が長引き迎えが遅れた。周辺を捜すと本人曰く「秘密基地」と呼ばれるエリアで男子4,5人が固まって遊んでいた。そこに旭もいた。「遅れて悪かったね」と近寄ると旭以外の子たちはアイスを食べていた。旭は何も言わなかったが、淋しい想いをさせたかもしれないと帰路に就く間その光景が目に浮かび離れなかった。
夏休みの間、旭は児童クラブに通いながら亀山の林間学校で工作やスケッチをしたり、海や親戚のいる実家へお泊りするなどして彼なりに楽しんでいた。只家族で思い出に残るような時間を今年は作れなかった。旭は気にしていないが父親としては気になる。そんな最中にお小遣いの話が出た。欲しいものは流行りのゲームで使うカード。プールでの出来事もあったので私は買ってあげる約束をして仕事に出かけた。後で聞くと児童クラブの間中カードが頭から離れず楽しみで仕方がなかったそうだ。仕事を終え旭に連絡して現れた時に彼は「パパごめんね」と言う。理由を聞くとお金を使わせてしまうことを気にしていた。私は「大丈夫。悪くないんだから謝らなくていいよ」と言ってやりコンビニでカードを買ってあげた。旭は声が上ずりながら何度もありがとうと言う。明らかに普段とは違う表情で。300円ちょっとの買い物で素直に喜ぶ姿が意地らしくもあり、子供に遠慮させていた親として複雑な心境になった。「パパに買ってもらったカードは絶対に友達と交換せんけー」と約束手形のように話す旭にどう応えて良いか戸惑う自分がいた。お小遣い制度は先伸ばし中である。
昇より