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2022年01月

あさひはのぼる

2022年1月1日元日の朝陽が、関門橋の遥か先から昇り海峡の街を照らす。明るく、力強くて、神々しい。ベランダに立ち光を浴びてると徐々に体も目覚め、何だかワクワクしてきた。今年は良い年になるぞ。そんな予感がした。我が家の旭も力強い熱いまなざしを私に向けている。そうでした。お年玉ね。新年のご挨拶もそこそこに手渡す。今年は寅年。旭は年男で4月から中学生になる。世の流れに従ってか制服も詰襟からブレザーになるらしく、「今まで通りでいいのに」と、本人は余り納得していない。身長も150センチ近くまで伸びた。ママを追い抜くのもすぐだ。身支度整え祖父母宅に年始のご挨拶に伺う。今年は2年振りに親戚が帰省しており、2階の六畳と三畳の続き間が子どもたちで一杯だった。今は一人一台が当たり前なんだろう。黙々とゲームに興じている。旭はいとこたちとの久々の再会を喜び、早速オンラインゲームに混ぜてもらっていた。普段電話で顔を見ながらお話する機会はあっても、やはり実際に会うとホッとする。TVを見たり、共に食事できたことが何より嬉しかった。私の実家では、旭がクリスマスプレゼントで貰ったジェンガを持ってきて、家族対抗戦を行い大いに盛り上がる。その後庭に出て花火をした。冬に庭先で花火なんて可笑しかったけど、夏休みにタイミングを逸した花火が自宅のリビングにポツンとほったらかしにされていたのが気になり持参していた。その夜は風もなく左程寒くなかったのも幸いした。縁側に家族が集い、手に手に花火を持ち火をつける。賑やかにはしゃぐ声、指先を照らす光に浮かぶ顔。孫を見つめる両親の眼差しが優しかった。無病息災、家内安全、共に由。残すは商売繁盛のみ。初詣の時のおみくじは末吉で「さわがぬが利益」とある。「時が来て思う事も次第に出来て幸福目の前に集まるけれど、よくよく物を考えてしないと不意のことがあって損をすることがある。これを心得てすればよい。」

なるほど。捕ら(寅)ぬ狸の皮算用ですな。

山中昇

山中昇プロフィール

1971年7月14日生まれ。 地元下関の高校を卒業後、東京の大学に進学&卒業。雑誌編集の仕事と、劇団員を経験したのち地元に戻り、1998年地元下関に開局したComeon! FMに勤務。制作部長として番組制作に取り組む。
2008年FM開局当初から一緒に番組を担当していたパーソナリティーと結婚。2010年3月長男旭誕生。1児の父となる。

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