エッセイを読む

2021年06月

あさひはのぼる

 旭は小学六年生になりました。毎日元気に登校しています。一日中マスクを付けて生活しているので、外すとマスク焼けしたあとがくっきり残った顔が現れます。息苦しくて外で遊びにくかったり、こどもの皮膚病も流行っているとか・・・顎を突き出し得意気で踊るBTSの「Dynamite」を披露するはずだった運動会がコロナの影響で秋に延期になったり、プールの授業が中止になったりして気持ちの揺れ動く日々ですが、昨年の臨時休業を思えば何のこれしき。小学校最後の一年を有意義に過ごして欲しいと願うばかりです。

 そういえば、今年に入って旭の声がかすれ始めました。風邪でも引いたかと思ってましたが、どうやら声変わり。祖母に電話した際「甥っ子よりも随分早いやないの?顔もしっかりしてきたね」と言われ合点がいきました。身長も伸び盛りで気にしていた体型もスッキリ。寝る前のママの「180センチ呪文」が功を奏したのかな?本人曰く「後は足回りをシェイプしたら完璧」なんだとか。口調も大人びてきたので、あっという間に少年から青年になったみたい。そんなに急いで大きくならなくてもいいのにと、心の中でこぼす私がいます。(笑)

 体は目に見えて成長していますが、ふとした仕草に幼顔を覗かせる時もたまにあるんです。登校する前の事でした。旭は片目の視力が良くないので歯を磨く時は窓の近くに座り、遠く関門橋を見ながら歯磨きします。この日は良く晴れた日でした。朝の支度が気になった私が何気なく見ると、旭は畳に座り手を朝陽にかざして上下させていました。掌で犬の形を作り「影絵遊び」をしていたんです。一人遊びするその姿が幼き日と重なり、「何してんの。早く準備しなさい。」なんて声を掛けられないような雰囲気で、愛くるしい笑みを浮かべてました。「あっ!」と私に気づき照れ臭そうに手を振ってきたので私の胸は思わずキュンキュン君に胸キュン。今で言う「キュン死」しちゃいました。声を掛けてもおざなりで、親の知らないナイショなことがこれからどんどん増えてくるだろうに…彼を見送った後、ちゃんと「子離れ」出来るだろうかと心配になり、ため息をつき扉を閉める父親がいるのでした。先が思いやられますね。でも、ドアは閉めても心は閉じないでね。お願い。

山中昇

山中昇プロフィール

1971年7月14日生まれ。 地元下関の高校を卒業後、東京の大学に進学&卒業。雑誌編集の仕事と、劇団員を経験したのち地元に戻り、1998年地元下関に開局したComeon! FMに勤務。制作部長として番組制作に取り組む。
2008年FM開局当初から一緒に番組を担当していたパーソナリティーと結婚。2010年3月長男旭誕生。1児の父となる。

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