エッセイを読む

2020年02月

あさひはのぼる

 パソコンのデータを整理しているときに、3歳の頃の旭の動画があったので開いてみると、節分の頃のものだった。パジャマ姿で椅子に腰かけている旭の前に赤い鬼が登場するや否や、小声で「こわい」と呟き顏を崩して泣き出す。ママは動画を撮りながら旭に豆を投げろと加勢するも鳴き声はどんどん大きくなり「パパと遊びたいだけだったのに・・・」としょんぼりした声を上げ、ママに助けを求め肩に顔をうずめていた。あれから6年。先日の節分は「掃除が大変だから豆は2粒ずつまいてね。」というママの号令のもと、控えめに執り行われた。豆まきの際、旭にその当時の話をして「あの時は可愛かった。また小さくなって。」とお願いすると困った顔をされた。その顔を見て、これからどんどん大きくなっていくんだろうなあと思った。

 ここ2年近く旭は学校を休まず登校しているが、1月末の週末に体調を崩した。前日から「寒い。寒い」と言っていたけど大丈夫だろうと気にしてなかったが、友人宅から遊んで帰ってくると顔が真っ赤だった。熱は37・9度。すぐに床に就かせた。2日間寝て熱も下がったけど本調子じゃなかったので、「無理せんでええよ。学校は休む?」と尋ねると、「行く。」という。その時の目が妙に大人っぽかった。翌朝支度をしていつものように出掛ける。エレベーターが来るまでの間、見送りに出た私たちに踊っておどけて見せる。閉まり際に「行ってきます。パパとママもお仕事頑張ってね。」と声を掛けていつものように登校して行った。

 先日、お風呂に入っているときに「パパあのね。」と言ってきた。どうしたのと尋ねると「この間の授業で将来の夢は何ですかと聞かれたんよね。」「何て応えたの?」「パパのお仕事を手伝いたいって言ったんよ。」「そうか。ありがとう。パパも頑張るよ。」と言葉にはならない感情が湧き出てどうしようもなかった。

 そのままで、自分らしく成長してほしいと願うばかりです。

  
昇より

山中昇プロフィール

1971年7月14日生まれ。 地元下関の高校を卒業後、東京の大学に進学&卒業。雑誌編集の仕事と、劇団員を経験したのち地元に戻り、1998年地元下関に開局したComeon! FMに勤務。制作部長として番組制作に取り組む。
2008年FM開局当初から一緒に番組を担当していたパーソナリティーと結婚。2010年3月長男旭誕生。1児の父となる。

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