絵本の読みあいを長く続けていると、思いがけない読みに出会うことがある。
数日前、服役中のお母さんたちと、「わたしのワンピース」を読んだ。私は、いつものように、ミシンカタカタ、ミシンカタカタと、真っ白い布を縫っていく。今日も、新しい真っ白なワンピースを仕上げて、ここにいるみんなといっしょに、こころの散歩に出かけ、みつけたものをワンピースの模様にしていこうね、っていうきもちで。誰もがしんとして、絵本の画面を見つめている。最後に長〜い夜を超えて虹の橋をわたり、新しい朝をむかえる。ラストシーンでのうさぎの目覚めと、遠ざかる、らららん、ろろろんの歌声。静かに本を閉じると、A さんが口を開きました。
「このうさぎ、死んじゃったんですね」えっ?今なんて言った?
すると、B さんが「わたしも、おんなじこと考えてました。」
一瞬、ぽかんとしましたが、私には、A さんB さんの読みは、決しておかしなものではなく、今の彼女たちの旅の物語なんだと思えました。自分で死へ向かう旅の衣装を縫い、ひとりで、はじめての道をゆく。今まで気づく余裕もなかった花や木の実や小鳥を自分の人生の模様にして、空へ還っていけたら。もしもその空に虹がかかっていたなら、私は目を閉じて自分を預けてみたい。そして、朝が明けたらほんとうの私に生まれ変わりたい・・・
「子どもたちと読みあってばかりだったから、あなたたちひとりずつのワンピースのこと、気づかなかった。教えてくれてありがとう」と言ったら、AさんもBさんも、かすかにうなずいた。
しばらくして、C さんが、手を挙げた。「ちょっとちがうはなしなんですけど、、、」と切り出し、間があいた。「あの、私目が悪いんで、ずっと、わたしのグリンピースだと思ってきいてました。わたしのグリンピースを作るんだと思って。でも、いつまでたってもグリンピースでてこなくて」
冗談ではない。ふざけてなんかいない。絵本を読んでもらったことも読んであげたこともないというC さんにとっての、はじめての出会いが、今この場所で正直に語られているのだ。
別れ際、縫製の訓練があるメンバーのひとりが、「あー、まじ、また、ミシンカタカターが、はじまるわ」とつぶやきました。
みんな、みんな、が、ん、ば、り、や。
