エッセイを読む

2025年06月

生き物

先日ある小学校で本の話をしていたとき『人とくらす街の虫発見記』(少年写真新聞社)の本を見せた途端、「ヒエー!」と言って見たくないという表情をした子どもが数人。もちろん私はフフフと心の中で笑いながら、その本に載っている虫の美しさや、生き抜くための力強い戦略を話しましたが、そのうち殆どが「スゴイ!面白いじゃん!」という受容の表情に変わっていきました。

幼い頃は皆んな好奇心旺盛ですから、ゴキブリが部屋の隅にいても、廊下にアリが行列をつくっていても、思わず「なんだ、これは?」とじっと見たり、掴もうとしたりします。でも、そこに大人がいて「きゃー!」とか「怖い!」と言った途端に、これは怖いのだと刷り込まれてしまいます。

我が家は隙間だらけ。子ども時代、父から「おーい、きてごらん」と呼ばれていくと、雨戸を入れる戸袋の中に大きなヘビがトグロを巻いています。「これはアオダイショウだから大丈夫」そう言われてヘビが出ていくまでしゃがんで観察していたのが、ヘビ初体験。流石に掴みませんでしたが、以前に行った学校で、休み時間に木のそばで図鑑を広げながらたむろしている男の子達がいました。近寄ってみると30 センチくらいのヘビ。「アオダイショウや!毒はなし。でも噛むかもしれん」情報を共有しながらチャイムがなるまでみんなで観察。私も思わずマジマジと久しぶりのアオダイショウを眺めました。

現代は家の外と内がピッタリと区切られるようになりました。それにつれて、人間も自分中心になってきたような。個々の尊重は大切ですが、チョッピリ冷たいような気がするのは、私がいい加減に生きてきたからかもしれません。

「昆虫記」で有名なファーブル。子どもの頃、貧しい家で祖父母に預けられ、早くから働いていましたが、彼にはたくさんの友達がいました。それが昆虫達でした。小さくても命をつなぐ生き物がフアーブルに力を与えていたのでしょう。

小さいけれど生命を持つ虫も動物も植物も、そして知らない国の人たちも、みんな繋がっているのです。アリの行列見ていて遅刻しそうに!!

横山眞佐子

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