エッセイを読む

2023年12月

視点を変える

「こどもの広場」は小さい人でも自分で好きな本に触れて、棚から取り出せるように、床に座った幼児の目の前にちょうどいい年齢用の本を置いています。の、つもりだったのに、ある日そこにハイハイして寄って行った子どもが熱心に本から紙を引き抜いてはポンポン投げています。あらら!!それ「スリップ」と言って本の名札みたいな大事なものなんだよ!と言ったって、本人の関心は本の頭からヒラリと出ている紙にしかない。それを小さな指でつまんで上に引っ張る、ぽい!また持って引っ張る、ぽい!この子にとって初めての体験。大人の私たちはそんなことに夢中にならないけど、小さい人にはどんなふうに見えているのかな?

子ども時代には、穴があればのぞいてみたり、足元に落ちている綺麗な石を拾ったり、葉っぱの裏にいる青虫を探し回ったりしなかったでしょうか?大人になるとそんな事している人は少なくなるような気がします。

自分の「視点」が変わるのは、背が伸び実際に見える物が違ってくると同時に、知識も増えてきて関心が変化するから人間は成長と共に精神的内面の視点というものを、強く広く育てていかなくてはいけないのではないでしょうか。

学校で先生が「今日はよくがんばったね」と肩をたたいたら、親からセクハラと文句を言われた。だから子どもにうっかり触らないように腕は組んでいるのです、と言われた時はびっくり。夕方、郊外の道を歩いている時、下校してくる生徒たちに「おかえりー」と声をかけたら全員目を逸らし無視されました。「知らない人は危ない」と言われていたようです。その頃子どもが危険に巻き込まれる事件がおきていたのです。

社会の変化が私たちの視点をいやおうなしに変えてしまう。1 番恐ろしいと思うのは戦争です。命はどんな立場でもたった一つ。宗教上、資源、権力、民族、政治、文化、みんなそれぞれの大切なものなのに、ひとたび紛争になると勝ち負けの視点だけに。もしウクライナで銃を構えている兵士が一瞬視点を変えて、前にいるのが自分の子どもだったらどう見えるだろうか?!撃つ方、撃たれる方、銃口を見ている方になったらどんな気持ちになるだろうか?とテレビ・新聞を見ながら、私の視点は?と考えずにはいられません。

2024 年は他者の視点で物事を見られる世界になりますように。

横山眞佐子

いままでのエッセイを見る

バックナンバー

毎月のエッセイは
ひろば通信に掲載されています

ひろば通信には新刊の情報やこころがほっこりするエッセイが盛り沢山!