エッセイを読む

2020年06月

子どもの目線

 「これ間違いよね!」。先日選書会に行った学校で、2人の生徒から声をかけられた。2人は一冊の本を広げている。一瞬、本の内容が間違っていると言われているのか、そりゃマズイと思わず読み始めたけど、どこが間違っているのか発見できず!困っている私に、ほら!と指し示されたのは「一年生」と書かれた横の読み仮名が「一せんせい」となっているところ。今、目を通したのに気がついていなかった。

 漢字が並んだ文章を読み慣れてしまった大人は余程知らない漢字以外は読み飛ばすように学習してしまっているのか。一方子どもたちはまだ「読み方」「書き方」の知識を増やし中。そこには大人になって雑に生きているものとは違う丁寧さと視点の違いがあるのかも。後日別の大人の友人に「このページの間違いを探して!」とテストしたけどやはり降参された。

 今から40年前子どもの本専門店を作ろうと思った時、我が子が通っていた幼稚園の先生から「私たちの日常で使っているものは全て大人に合わせて作られているのよね。本当に子どもの目の高さに合わせて使えるものはほとんど無いの」と言われた。そう言われて見回すと、机も子どもの目の高さからすると裏しか見えない。タンスの引き出しも大きすぎる。本箱もやたら高い。身長まだ1メートルに満たない身長の子どもの目線から見ると辺りはどんな風に見えているのか?ハイハイの子どもからは?地面に這いつくばるようにして辺りを見てみると!上からでは見えていなかったものが見えてくる。

 だから、出来るだけ子どもの目の高さも考えたい・・と思って低い位置に本を並べている。しかし、面白いことにこの小さい人向きの本棚の前で、本ではなく本の中に挟み込んであるスリップと呼ばれるシオリのようなカードを引っ張り出すことに夢中になる子が多々いる。本の「天」と呼ばれる上にちょっぴりでているカードのつまみを引っ張って次々と引き抜いていく。ぽいぽいぽい!いいからいいから!

 小さなものに目を止める時期。こんな面白いことも、残念ながら少し大きくなるとすっかり忘れて、電車、恐竜、スイーツの本、高いところにある読みでのある本に心を奪われますけど。

横山眞佐子

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