エッセイを読む

2023年11月

星空

「銀が鉄と銅になる夜ってどんな宇宙現象なんだろうね?!」って、中学生から言われたことがあります。一冊の本を抱えながら、いたずらっぽい目が笑っていました。一瞬なんのことかわからなかった私。

宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」のことだと直ぐに気がついても当然なのに。こんな風に本を読みながらユーモアを持って新たな想像の世界に踏み出せる事に感心しました。私の幼少期は今のように子どもの本(児童文学)と呼ばれるものはほとんどありませんでした。グリム、アンデルセン、世界の昔話、少しずつ創作の作品が本になりかけていましたが。

そんな中、賢治の本は大好きでしたが、この「銀河鉄道の夜」はある時まできちんと読めなかった一冊でした。幼いながら、死というものを感じ取っていたのかもしれません。

今年ももうすぐ終わろうとしています。一年を振り返ると嬉しいことも悲しいこともいろいろでしょうが、私にとっては大切な友人が何人も旅立ってしまった哀しみの年でした。何かあるたびに共に楽しんだ日々。誰でも生きている限り喪失の悲しみからは逃れられませんが、人間は思い出すことができるのです。ジョバンニはカムパネルラと共に過ごした銀河の中を走る鉄道の中で、「ほんとうのさいわい」についてしゃべったことを忘れないでしょうし、その時の幸いを抱えて今日を生きるのでしょう。

寒くなりましたが、晴れた夜、空を見上げてみましょう。早い時間にはあかるい二つの惑星。木星と土星。そして12月半ばには双子座流星群。美しい宇宙現象を見上げながら、今、地球の上では一瞬のうちに幼い生命が奪われていることを考えてしまいます。

思わず、戦争は止めろ!!と叫んでいる私。

横山眞佐子

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