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2023年01月

美味しい野菜

今日の夕飯は肉じゃがにしようかな?それに胡瓜とわかめの酢の物!なんて考えながら冷蔵庫を開けて材料を確認。人参は昨日買った直売所の吉本さんと生産者の名前が付いている生き生きした葉っぱつき。洗って葉っぱを切り落とし、ボリボリ。ウム!甘い、香りがいいなあ。私の癖です。調理する前に野菜を生でかじってみる。皆さんそんな事しませんか?ほんとはそこ、一番美味しいところですよね。

戦後すぐ生まれの私達はまだまだ食べ物が豊かではありませんでした。多分田畑を作っていた一番の働き手が戦争に行き、終戦後も人手が足りなかったのでしょう。我が家も、松の木や灯籠や飛び石のある庭の石の間が掘り返されて胡瓜やナスが植えられていました。実が大きくならないと採ってはダメと言われていましたが、ついつい新鮮でちょっとトゲトゲしている胡瓜をちぎってはポリポリしていたのを思い出します。私の味覚は野生的に育てられたのかもしれません。

大学に入り一番最初の授業で草ボウボウの畑に連れて行かれ、渡されたシャベルでその雑草を根から掘り返し、土を上に雑草は土の中に入るようにそのままひっくり返せと教えられました。そこにサツマイモの苗を植える。肥料は雑草が分解されたもの。また、田んぼでは苗を撒けと言われて戸惑いました。植えるではなく撒く?水の中に倒れていた苗のうち弱いものはそのまま消滅、強いものだけが自分の力で根を下に伸ばし身を起こし育っていくのだと。たとえ栽培種でも自然の中で生き抜く力を持ったものを育てていくことが、これからの農業には大事だと言われながら、先生の伝えたかったことは「人間も同じなのだ」ということかと気がつきます。

どんどん改良された野菜は自然環境の変化には弱い。だから手をかけ味をよくしようと特別な化学肥料を撒き、温室に入れる。虫がつかないように殺虫剤も。白菜に青虫を発見すると「これは安全、その上美味しいぞ!」って嬉しくなる私のような人は変?

過ぎてしまいましたが「春の七草」、スーパーではなく野原にもう一度摘みに行きませんか?スズナ、スズシロは冷蔵庫。あとは是非美味しい草を見つけてください。おすすめはヨモギ、フキノトウです。

「野菜」は野の贈り物です。

横山眞佐子

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