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2022年12月

笑 う

寒さが本格的になってきて北風が冷たく震え上がっている日、小学校の側を通りました。給食が終わって、お昼休み時間。運動場から多くの子ども達の歓声が聞こえてきます。コロナの対応に右往左往しながら3年間を過ごしてきましたが、運動場に散らばりボールを投げたり大縄跳びをしたり追いかけっこしたり。1年生から6年生までがそれぞれに楽しんでいるようですが、ほぼ全員マスクをしています。寒くてその方が良いのかもしれませんが、先日も先生が「外で遊ぶ時はマスクなしでもいいと言ったけどみんな外さないんだよね!」と言われてました。顔見られるのが恥ずかしいっていう子もいたなあ。感受性が育つ子ども時代をこんな風に過ごさなくてはならない事をどう受け止めているのでしょうか?

広場に乳歯が生え始めた、8ヶ月くらいの男の子が抱っこされて来ました。ついつい可愛くてチョンチョン触ったり話しかけてみたりしましたが、口に指を入れたまま「こいつなんだろう?」の不審な顔をして表情を変えてくれません。ところがスタッフが「いらっしゃーい」と言いながらじぶんのマスクを一瞬外しその子の目を見てニッコリ笑ったのです。その瞬間、その子も同じ笑顔でニッコリ!口からスパンと指も外して表情豊かな顔になりました。

どっちもすごい!「目は口ほどに物を言う」と言いますがやっぱり目だけではわかりかねる気持ちがあります。

京都大学霊長類研究所での研究や動物生態学などで有名な河合雅雄さんが著書の中で「笑い」について書いています。サルには口の端を後ろに引き歯を剥き出す行動が2種類あり、一つは歯を閉じたままで、もう一つは歯を上下に開くパターンだそうです。

やってみましょう。まず口の端を後ろに引き、笑ってみる。なんだか心の底から笑ってない。今度は口を開けてみる!ワッハッハ。前者はスマイルに通じ、後者はラーフ(口を開けて声を出して笑う)になっていくそうです。そして笑いには起源的に複雑な心情の表出と深く絡み合っていると。

気兼ねなく大きな声を出して心から笑い合ったり好きなだけ身体を動かしたり、子どもの時代にたくさんの経験できる日が来ますように!良い年をお迎えください。

出展「サルの目 ヒトの目」 河合雅雄(平凡社)

横山眞佐子

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