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2021年06月

雨、あめ、rain

 天気予報通り、午後から雨。それも降ってもいいでしょうか?と気兼ねしているような空模様の中、学校の終わった小学生達が帰っていました。二人の女の子は傘をささないままくっついて、楽しそうにおしゃべりしながら歩いています。前の集団は傘を重ね合わせながら大きなテントのようにしています。その先で傘が開いたり閉じたりしています。近寄ってみたら男の子が風で傘が開くかどうか振り回していました。どのくらいの風圧で傘が開くのか?自分も回ったり傘を下から上に振り回したり。科学的帰り道です。ちょっと危ないけど。

 大人になると傘は雨に濡れないための「道具」として使うのが当たり前。でも子どもにとって「雨に濡れない」ということはあんまり大切なことではないのかもしれません。思い出しました。小学生の頃、大雨の帰り道みんなで開いた傘を逆さまにして水を溜めてグルグル回すとか、溜まった水ごと傘をさしてわざとずぶ濡れになるとか、雨水がすごいスピードで流れている溝の中に傘を突き立てて水の勢いに大騒ぎしたりとか、大抵誰かの傘が壊れる事になりひどく叱られたはずですが楽しかった。やっぱり雨の日は濡れるのも楽しい。濡れても気にならない。せっかくの雨を楽しみたい。

 魅力的な雨の本が2冊あります。「雨、あめ」(ピーター・スピア作。評論社刊)。レインコートを着て雨の中を飛び出していく姉弟。視界も滲むほどの大雨の中、雫が広がる水溜りの面白さや蜘蛛の巣にかかる雨粒の光の美しさなどを楽しみます。自然と一体になった子ども達の喜びです。

 もう一冊は「おじさんのかさ」(佐野洋子作。講談社刊)。ダンディなおじさんは立派な傘を持っていますが、雨が降ってもさしません。傘が濡れるからです。しかし男の子と女の子が傘の下で楽しそうに歌いながら帰っていくのをみて、ふと傘をさして歩き出します。

 どちらも子どもから雨の日の楽しさを教えられる本なのです。
 もう一つ思い出しました。1952年アメリカのミュージカル映画「雨に唄えば」(Singin’ in the Rain)。ジーン・ケリーが大雨の街の中でまるで子どものように大はしゃぎしながら歌い踊ります。
 大雨の時、こっそりやってみたい人はYouTubeで見てくださいね。

横山眞佐子

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