エッセイを読む

2020年03月

本を読む

 コロナウイルス騒ぎで、こどもの広場3月半ばに予定していたイベントが中止になり、ぽっかり空いたカレンダー。それだけでなく忙しく準備していたものが無くなると気持ちにも穴が空く。何で穴埋め?こんな時こそ本を読むでは。今からもう何十年も前の事だけど、下関を離れ東北の町で長女が生まれ子育て真っ最中。初めての経験だし夫は出張が多く家に居ない。昼間は赤ちゃんの世話で忙しいのに、その子が寝てしまった後一人ぼっちでどうしようもない長い時間がある。ポツンと一人ぼっち!という感覚だった私を別世界に連れて行ってくれたのが、学生時代に無理して買った「チボー家の人々」全13巻だった。買ったけど読む機会がなかった、棚の上にずらりと並んだままの本。さっきまでぐずっていた赤ん坊が眠ってしまった傍で夢中で読んだ。気がつけばパッチリ目を開けた子どもが私を見ている。授乳の時間!時を過ごすということは簡単で難しい。24時間はみんな同じだけれど、昨日と今日は全然違う。同じ1時間が長かったり短かったりするしつまらなかったり面白かったりもする。

 平日や休日、夏休みや春休み。学校に行き始めた子どもには、当たり前のようにそんなスケジュールで毎日が動いていく。全て決められた通りで、教科の内容も時間も、遊ぶ時間も自由ではないのが多くの子どもたちの現実になっている。学校が終わったら好きなように過ごせるかと言えば、部活や習い事、いつまでも校庭で遊んでいられない。近くの公園に行くとうるさいと苦情が出たり、何より自由にブラブラする時間が無い。

 ところがコロナのお陰で、全く予定外の自由な時間がやってきた。一応宿題はあるらしいが時間割は無い。親も子どももこの自由な時間をどうしているのだろうか?今こそチャンス。もしかしたら庭の草取り?ついでに雑草の図鑑で名前を調べる?おやつのプリンを作ってみる?ガランとした公園で走り回る?友達とキャッチボール!

 それでも時間が余って、ポツンと一人ぼっちを感じたら、本を開いてみよう。思いがけない暇つぶしと同時に心が豊かに慰められる・・はず。

横山眞佐子

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