エッセイを読む

2021年12月

炬 燵

 炬燵にスッポリ寝そべって、本を読みながらお菓子やみかんを食べる!幸せでしょう?私の冬の過ごし方でした。でも今の子どもたちはなかなかないよね〜と思っていたら、なんとぐるりと本に囲まれた場所に炬燵が二つ。思わず「いいなあ〜!私も入りた〜い」と叫んでしまいました。島根県の小さいけれど、素敵な小学校です。炬燵だけではありません。座り心地が良い立派なソファもあります。「校長室にあったのに、没収されちゃった!」って笑いながら話す校長先生も幸せそう。

 さまざまな筆記用具やちょっとした工作をするための材料が置かれている棚もありました。休み時間、数人の子ども達が本気で絵を描いていて、それぞれが二つ折りにして封筒に入れて持ち帰っていました。ひょっとして誰かにあげるクリスマスのカードかな?そして放課後にはランドセルを置いたまま本に読み耽っている一年生も。

 学校の図書室はなるべく居心地良く、くつろげる場所だといいなあ。「学校」という学びの場所の一角だけど、ここだけは別世界。本を開けば当然どんな所にも行けるけど、現実の場所も教室とはちょっと違っててもいい。集団生活の中のちょっとした孤独の場所でもいいし、困った時の避難場所になったり。

 そんな事を考えていたらふと思い出しました。高校時代、それまで当たり前に走っていた人生の線路を降りてみたくなった事がありました。誰でも通る思春期でしょう。授業もパスしたい!でもそれお実行する勇気もない私の隠れ場所が図書室の片隅でした。調べ物をしているふりをしながらひっそりこっそりサボっていました。何故か誰にも咎められず、問題にもならず、そのうちそんなことしている自分も馬鹿馬鹿しくなって授業に参加。無事卒業した後で担任だった先生から言われました。「あの頃〇〇先生が、今日も本に負けたって、悩んでおられたよ」

 先生ごめんなさい!でも図書室のお陰で支線に入ったけれど、また本線に戻れました。

 図書館ではありませんし炬燵もありませんが「こどもの広場」の本箱の隅で、或いはテーブルについて、或いは床に寝そべって、本を読んでください。

横山眞佐子

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