エッセイを読む

2018年05月

危険は?

 雨が降っています。近頃は少しの雨なら傘を持たないで車まで走っていき、傘不要の雨の日になりつつあります。doortodoorの生活は便利だけど、なんだか味気ないし情けない。

 先日そんな雨の中、小学校の下校時の男の子達数人が傘を逆さにして大笑いしています。紺色の小さな傘の柄を持ってコマのように回しています。うまく回って中に入っていた雨水が飛び散ります!濡れまいと飛びすさりながら、また回します。やっぱり男子だなー!そこに女の子たちが通りかかり、馬鹿みたい!というように脇を通り抜け、しばらく行ったところで一人が傘をひっくり返しました!!女子!お前もか!と私は言いたい。でも大人!お前もか!と言われてもいいから私もやってみたい。一瞬の面白さを察知し、後先考えずやってみることは子ども時代の特権だと思うのです。傘の回転で水滴が飛び散る。雨水では少ないので、水かさの増している川に傘を突っ込んで水をもっと入れて回す。あるいは足元の溝に木の葉やゴミが吸い込まれていく。どうなっているのか?確かめて見ないではいられない。這いつくばって溝を覗く。中で水が渦を巻いている。科学する心の始まりです。

 でも、そんな事を言うと、「危険です」「寄り道はいけません」などという反論も返って来ます。大人の目の届かないところで、子ども達がしていることは確かに100パーセント安全とはいいきれないかもしれません。ほんの少しの間に、連れ去られ命を失ってしまう事件も起きました。では、いったいどうすれば?

 昔、父が幼い妹の手をとって、ヤカンがシュンシュンいっている火鉢のところに行きました。怯えながら見ている私の前でその手をほんの一瞬ヤカンに近づけ、すぐにひっこめました。一瞬驚いて目を見張った妹はそのあと大泣きに泣きました。「熱いだろう。絶対触ってはいけないよ」私も妹もヤカンには近づきません。言われただけでは、うっかり触るかもしれない危険を認識させるためにこんな方法を取ったのですね。危ないものを排除するのではなく、自身で危険を知ること。安全を担保しておいて危険を体験させること。昔の人の知恵でした。

 今はどうでしょう?危険を取り除き、安全安心をモットーに!それ、本当かな?増水している川がどんなスピードで流れていたい危ないか、一緒に行って子ども達に見せとかなきゃ!!

横山眞佐子

いままでのエッセイを見る

バックナンバー

毎月のエッセイは
ひろば通信に掲載されています

ひろば通信には新刊の情報やこころがほっこりするエッセイが盛り沢山!