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2022年03月

あさひはのぼる

 関門海峡に面している下関市。朝は海峡の向こうから太陽が昇り、急に明るくなっていく部屋の中。気がつけば暖かい陽が差し込み、窓を開けて外の空気を入れ掃除機をかけながらふと見ると、枯れ枝だったカツラの枝先が少し赤みを帯びていて、一気にやってくる春。同じだと思っている毎日も全く同じということはなく、風景も変わりそれを受け止める自分の気持ちも止まっているわけにはいかないのです。

 今から12年前、友人の家に一人の男の子が生まれました。家族も周りも大喜び。友人はのぼるくん。赤ちゃんはあさひくんと名付けられ、お父さんの育児ドタバタを書いてみたら?という私の無茶な要求に「うん、いいよ」。それからこの『ひろば通信』にエッセイを書いてくれることになりました。

 海峡に朝日が昇り、辺りも心も明るくなる『あさひがのぼる』。

 新米パパの子育ては右往左往。それを正面から、時には横っちょから面白がって見守ってくれるママがいなければ、こうはいかなかったに違いありません。子育てって簡単なようで難しい。何しろどんどん変化する子どもに寄り添うなんて言葉では言えるけど、日々「なんじゃこれ?どうすればいいん?」「どうしてわからないのよ〜!」「あ〜ぁ!」の連続なんです。ところが凄いことにそんな大人の困惑をすっかり受け止めて「よし!任せろ。わかってるよ。」と子どもは前向きに成長してくれるのですね。

 抱っこ、ハイハイ、つかまり立ち・・・のあさひくんも12歳。4月から中学生。のぼるパパもなつこママもそろそろ子育てがひと段落・・・。というわけで通信の「あさひはのぼる」は今回が最後です。

 もう“こども”ではなく“人間”として一人で立っている我が子を見る時、親は嬉しくも寂しくもありますが、ここは決意のしどころ。「これからはパパとママは君の応援団だ。自分のやりたいことを自分で決めて責任持ってやったらいい。ただ、本当に困った時にはどんな時も100%君の味方がここにいるからね。」と伝えて欲しい。

 子どもから大人へ、太陽みたいにどんどん昇って他の人にも暖かい光を届けてね。
 天気が崩れても、あさひが見えなくても、光は届く。

横山眞佐子

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