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2024年10月

日常

麻の服にはアイロンはかけない。木綿はシワをなくすように霧吹きで少し湿らせてから。ウールは硬く絞った布を当てて強く抑えないようにして優しく。子どもの頃に母から教えられたアイロンのかけ方。当時のアイロンは今のように蒸気が出るなんていうような物ではなく、重い鉄製だったし触れば火傷するほど熱い子どもには怖い物だった。日常生活に使う物がどんどん変化していく。ついこの間もそんな事を書いたっけ!と思い出しながら時代の変化を日々目にしてしまうのだ。

40年くらい前、アメリカから来た女性の家に招かれた時、スープを作るからと言われて興味津々、台所についていってみた。彼女はニンジン、ポテト、玉ねぎ、ベーコンを冷蔵庫から取り出し、大きめのナイフを手に・・・えっ?まな板は?と見ている私の前で器用にナイフで素材を削るようにして切り始めた。世の中は情報が簡単に行き交う時代になってきたし、たくさんの便利なものができてきたけれども、長年その国で受け継がれてきた日常のやり方は変わらないのかもしれない。

今日も玄関で靴を脱ぎ、部屋に入る。押し入れから布団を出して畳の床に敷いて、やれやれおやすみなさーい!でもちょっと待って、靴のままで室内に入らないからこそお布団を床に敷けるのだ。

私たちが作り出しているさまざまな便利なものが今一度見直しをする時期に来ているのかな?と思う。ついこの前まであったお豆腐屋さんがいつのまにかなくなった。お豆腐を買う時はボールや鍋を持っていき、そっと持って帰っていた。いつからか、お豆腐もお肉もプラスチックの容器に入っているのが当たり前に。教室の前の長い廊下を皆んなで並んでよーいどん!と競争しながら雑巾掛けしていたのも、今ではモップでシューっで終わり。便利になったかもしれないけれど、なんだかちょっと胸がチクチクする。やっぱりお肉屋さんで経木で包んでくれるのが嬉しい。

小さな日常の在り方をチョット大切にしたいな。

横山眞佐子

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